無戸籍の子供をなくす | 民法改正への取り組み

タイ北部の洞窟から奇跡の生還を遂げた13名のうち、コーチを含め3名が「無国籍」の境遇であったと、AFPが報じていました。背景などは下記リンクより。

タイ洞窟 「英雄」と称賛のコーチと少年3人、実は無国籍の境遇
http://www.afpbb.com/articles/-/3182094

無国籍の子供たちは、身分を証明できないことによって県外への遠征もままならず、このままでは成長してもサッカー選手になる夢も叶いません。記事にもあるように、今回のことがタイにおいて48万人とも言われる無国籍者に国籍を付与するきっかけになるよう願います。

我が国においても少なからぬ数の方が無戸籍でおらるのをご存知でしょうか。

出処により差異はありますが、支援活動をされているNPO団体によればその数「1万人」とのこと。特筆すべきはその多くが、「民法の規定」により無戸籍の境遇に陥っていることです。
民法条文_嫡出の否認

ご覧のように民法では、「夫」にのみ、自己の子ではないという嫡出否認権を認めています。
DV等で夫の元から逃げ出した女性が、新たなパートナーと巡り合い、子を授かったとします。ところが772条では、仮に離婚が成立したとしても、その後300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したもの、つまり元夫の子であると推定します。さらに、親子関係を否定する「自分の子ではない」という訴えを提起する権利は、夫にのみ774条で認められているのです。
そもそもが暴力から逃れようと身を隠していた女性が、現実的に「あなたの子ではないので嫡出否認の訴えを起こしてください」と頼めるでしょうか。

この規定が無戸籍の子を多数発生させているということは法務省も認識しており、数年前から本格的な調査と対策に取り組んでいます。法務省調査では、無戸籍の子どものうちの実に75%が前述の民法の規定に起因するとのこと。法務省トップページ左側のバナーにも「無戸籍でお困りの方々へ~戸籍を作る手続」という特設のリンクがあります。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00034.htms

嫡出否認」の訴えを夫にしか認めない民法の規定は違憲だとして、神戸市内の女性が国を相手に損害賠償を求めた訴訟の判決が昨年11月にありました。訴えそのものは認められませんでしたが、裁判長は「妻に寄り添った支援が必要」とも述べておられました。
原告の女性が、乳幼児健診や就学の通知が来なかったことがつらかったと言われていたのが強く印象に残っています。

今年6月、母親側が訴えを起こせるよう、民法改正に向けた大きな動きも始まりました。
大人の事情で、子がいわれのない不利益を被ることは、今後必ずなくしてゆかなければなりません。

 

(7/17/2018 追記)
週末の読売新聞に上川大臣のインタビュー記事が掲載されていました。それによれば、法務省の調査でこれまで確認された無戸籍者の数が1,723人、そのうち、本年6月10日までに1,022人の戸籍を作成できたそうです。