不法就労仲介者となった失踪技能実習生の話


入管法改正の議論に際して、技能実習生の失踪や、(技能実習)法改正前の制度の不備について報道されることが本当に多くなりました。誤った情報や明らかな偏向報道、既知の事実、記者の知識不足等も多くみられるため、そのすべてには目を通していません。そんな中で目を引いたのが下記、今朝の読売社会面の見出しです。

元実習生 不法就労を仲介  難民申請も指南

「ブローカー」と呼ばれる悪質仲介者が数多く存在するのは残念ながら事実です。
また、技能実習生が「難民申請をすれば合法的に働ける」との噂に踊らされて実習先から逃亡するケースも、2017年までは少なからずありました。

この「元実習生」はカンボジア人。低賃金に嫌気して2016年に岐阜県内の実習先から逃亡。同国人のブローカーから難民申請することを入れ知恵され、「特定活動(難民認定申請中)」の在留資格を取得しました。
その後、埼玉県にある派遣会社の営業所から紹介を受け、上尾市内の工場で働き始めるも、この「派遣会社の営業所」に在留資格をろくに確認されないまま採用されたため、「これは使える」と、SNSを活用して今度は自らが悪質ブローカーに転じたというものでした。

読売新聞記事によれば、「住居、仕事、難民申請の指南をセットにした謝礼は、1人あたり25万円。分割払いを認め、給料日に現金を徴収して回った。男は数十人に仕事を紹介しており、入管当局に対し、「百数十万円を稼いだ」と供述した」とのこと。
当然ながら、同工場で不法就労していたカンボジア人元技能実習生は今年7月に全員摘発、翌月にはブローカーの男も強制退去となっています。

前掲の「派遣会社の営業所」は、「就労資格の有無を確認しないまま勧められるがまま安易に雇っていた」と入管当局に釈明したと記事には書かれていますが、(「知らなかった」と言いたいのでしょうが)これは不法就労助長罪に問うべき重大な過失です。こういった企業名は公表すべきです。


就労可能な在留資格をもって在留する外国人を雇用する事業主には、下記の3つの義務が(日本人を雇用する場合の義務に加えて)課されています。

1)在留カードの確認
2)ハローワークへの届出
3)中長期在留者の受入れに関する届出

3)は努力義務ですが、1)については確認せずに採用した当該外国人が不法就労者であれば不法就労助長罪に問われますし、2)に至っては届出を怠った時点で雇用対策法により罰則の対象となります。

(外国人を雇用する事業者の方の義務についてはこちらの投稿にも書いています。)


もちろん誰よりも悪いのはブローカーに転じた本人に違いありませんが、そもそもなぜ実習先を逃亡するに至ったのかも含め、彼が接した日本人の誰もが法令を遵守してさえいれば、こういった帰結には至らなかったであろうことは想像に難くありません。

外国人と一括りにして表現するのはどうかと思いますが、例えばアジアの大国である隣国など、公務員でも公然と賄賂を要求します。我が国の司法取引1号となった事例も、そもそもは現地役人が賄賂を要求したことに端を発していたと思います。商用で日本に来るたびに、自国の許認可担当官に送るためのブランド品やiPhoneなどを買っていく知人もいます。日本人は、決まりは守るためにあると考えますが、彼らは、そもそも決まりなどというものは、それをやぶって自分だけはうまくやるためにある、という意識でいます。

ですが、そんな我々から見て悪いやつらでも、日本人にはない寛大さを兼ね備えています。日本人は、他人に迷惑をかけないことを美徳と考えがちですが、それは彼らにとっては往々にして「冷淡」と映る。彼らは「そもそも人間はそんなに立派なものではなく、迷惑をかけあって生きるもの」というスタンスでいます。だから、ものすごく迷惑をかけます。電車やバスの中に大荷物で乗り込み、そしてものすごくうるさい(笑)。そのかわり、こちらがかけた迷惑も、大陸的なおおらかさで飲みこんでくれる。
私が少しだけ話せるその国の言葉には、「大丈夫」「平気」「どういたしまして」に相当する表現が、すぐに思いつくだけでも山のようにあるのです。だから、文化の違いはあっても、かけがえのない友人でいられるのです。

 

 

おそらく明日12月7日、改正入管法は参院にて可決されます。
好むと好まざるとに関わらず、生活者としての外国人が日本中に増える日が間もなくやってきます。
そんな中、彼らの「決まりを守らない」という点に目を向けすぎると、日本社会全体、産業界や地方の抱える問題はいつまでたっても解決には至らないでしょう。

日本人ひとりひとりが、法を遵守する意識と毅然とした態度、そしてあと一歩、半歩でも踏み込んでいく積極さとをもって、ご近所の外国人に接することができたなら、そこにこそ光があると私は思います。

 

 

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