さまざまなビザ(在留資格)の要件緩和を検証

過去の投稿で外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策について触れました。
その中の「2)留学生の就職支援(施策番号67~79)」において取り上げた複数の施策が現実味を帯びてきました。中には昨年中に制度運用が開始されたものもありますので,下記にまとめてみました。
(注:以下,新聞紙面の報道による情報も含みます。それらは政府や所轄庁による正式な発表ではありませんので,最終的には省令,告示等により裏付けが必要である点,お含み置き下さい。)


施策番号69 外国人起業家向け・起業準備のための在留を最長1年にわたり認める制度(運用開始済み)

平成30年12月28日,平成30年経済産業省告示第256号,外国人起業活動促進事業に関する告示が発効しました。留学生を含む外国人が日本で起業したいと考える場合,これまでは東京都などわずかなエリアにおいてのみ,特例的に最大半年間だけ認められる創業活動のための在留資格がありました。ですが,実際の創業準備において6か月というのは決して十分な時間とは言えず,地域も限られているため,実際に活用された数は決して多くないと記憶しています。これを国家戦略特区といった垣根を取り払い,全国すべての自治体において導入できるようにし,さらには最長1年までの延長を認めるのが今回の緩和の内容です。

従来の流れの踏襲であるため手続は少し煩雑です。まずは自治体が「外国人企業活動管理支援計画」,平たく言えば「こういった方針・手続に従って,外国人の起業計画を審査し,支援・管理しますよ」というプログラムを策定し,経産省に認定の申請を行います。
経産省によりプログラムが認定された自治体のみが,外国人が入国管理局に創業準備のための在留資格を申請するにあたり必要な「起業準備活動確認書」を公布することが可能となるのです。

在留資格認定までの流れ

 

現時点で,福岡市が認定地方公共団体となっています。
この制度,国際的な経済活動の拠点を全国に設け,ひいては国際競争力を高めようという趣旨で導入されているものという理解です。福岡市は特区の創業活動ビザ(通称)制度においても積極的に取り組んでおり,今回も施行にあわせての申請,第1号の認定となりました。熱心な活動から,その強い意志が感じられます。

本制度が広範に利用されるためには,まずは自治体がアクションを起こさないと始まらないのですが,現実的には4月からの新制度のスタートに向けた支援準備等に忙殺され,手が回らない状況なのではないかと推察されます。普及には今しばらく時間がかかりそうです。

施策番号70 留学生が中小企業に就職する際の提出書類の緩和(新聞報道より)

留学生が日本企業に就職する際,就職先の企業は例外なくカテゴリー1~4に分類されます。分かりやすく言いますと,1が超大企業,2が大企業,3・4が中小企業と設立したばかりの企業です。誰でも名前を知っているような企業に就職する場合の提出書類はわずかで済みますが,中小企業への就職の場合は会社の決算書類,登記事項証明書に始まり,会社の沿革,役員一覧,事業内容,取引先,取引実績など,膨大な疎明資料を求められます。これが,留学生側,採用側いずれにとっても少なからぬ負担となっていました。

これら提出資料について,「大企業と同様の簡素化を図る」と総合的対応策にあったため,実務家としても興味津々でいたのですが,昨日の一部新聞報道によれば「国の補助事業などに参画し、審査を通過した中小企業」などを「経営に問題のない優良企業」として,緩和の対象とする方向とのことでした。
「国の補助事業など」の内容が漠然としているので多くのコメントは控えますが,どれほどの中小企業がこの表現でカバーされるのか,不安ではあります。

高度人材ポイント制の加点対象となる大学の大幅増(新聞報道より)

高度人材ポイント制というものがあります。ざっくり言いますと,その人の学歴や年齢,収入,研究実績,日本語能力などさまざまな要素をポイントに換算し,合計が70点を超えると出入国管理のさまざまな面で優遇されるというものです。

この中の特別加算項目として,国内の全大学のうち,特定の13の大学を卒業していると10点加点される,というものがあります。スーパーグローバル大学創成支援事業において「トップ型」に選ばれた13校がそれです。具体的には,北から北海道大学,東北大学,筑波大学,東京大学,東京医科歯科大学,東京工業大学,慶應義塾大学,早稲田大学,名古屋大学,京都大学,大阪大学,広島大学,九州大学。

この加点対象を一気に103校まで広げる,と,新聞報道にありました。

高度人材に該当するケースについては,長年外国人関連業務に携わっておられる行政書士さんでも,出会わない方は滅多に出会わない,と言います。私は幸い?なことに,短い業務歴でもお一人だけ,次回は高度人材に変更してみようと考えている女性がいますが,その方のみです。つまり,今後大幅に増えると見込まれている,技能実習や特定技能などで現業的分野で就労する外国人の方にとっては,報道の通りに実施されたとしても,まず縁のない措置ではあります。ですが,対象者にとっては大きな大きな10点であることは間違いありません。

たかが10点,されど10点。

これからもお一人お一人の人生に寄り添って,常に最善の方法を考えようと,思いを新たにしました。

専修学校において,修了者に「専門士」および「高度専門士」の称号を付与することができる課程の追加認定(1月25日官報)

これまでに挙げた緩和のどれよりも最も直接的な効果がありそうなのはこちらです。

現行の制度では,専門学校を卒業した留学生は,専門士または高度専門士の称号を付与された者のみが,その履修した課程に直接的な関連性を有する業種・職種に限って就職することができます(一部例外あり)。

この,修了者に対して専門士および高度専門士の称号を付与してよい,とされる課程が,1月25日の文部科学省告示によって新たに追加されました。

東京都を例にとると,専門士についてだけで(廃止された課程も数件あるため純増ではありませんが)24校の37課程が追加されています。告示の日以後(平成31年1月25日以後)に当該課程を修了する方に対し,専門士の称号が付与されます。頑張って学ばれた学生さんにとっては,留学生か日本人かを問わず朗報ですね!おめでとうございます。

なお,文科省のウェブサイトのリストは,少なくとも東京都と千葉県については本日時点で更新されておりませんのでご注意ください。


以上,いかがでしたでしょうか。

ひとつひとつは小さな変化であっても,対象となる方にとっては大きな緩和です。
これからも常に貪欲に情報を収集し,日本で働きたい皆さん,外国人を雇用したい皆さんを支える,小さな力であり続けようと思います。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です