性同一性障害特例法 | 性別適合手術を要件とする内容について最高裁が初めての判断

少し硬いタイトルになってしまいました。

平成31年1月23日,掲題の「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」において,性別変更のためには現実的には性別適合手術を受けなければならないとするその内容が違憲ではないかと争われた家事審判,最高裁の判断が出ました。

決定は,判事4名全員一致で「合憲」。「性別変更前の生殖機能によって子が生まれれば、親子関係の問題が起きて社会に混乱が生じることなどを避けるための配慮」というものでした。

特筆すべきは,2名の判事による補足意見の部分。

手術を受けるか否かは、本来、自由な意思に委ねられるものであり、身体の自由として憲法13条により保障される。規定はこの自由を制約する面がある。

規定の目的は法廷意見の通りだが、変更前の性別の生殖機能により懐妊・出産という事態が生ずることは極めてまれと考えられ、それにより生ずる混乱も相当程度限られたものといえる。

また、法廷意見の述べる配慮の必要性などは社会的状況の変化などに応じて変わり得るものである。特例法の施行から14年余を経て、これまで7000人超が性別変更を認められた。近年は社会の様々な分野で、性同一性障害者が性自認に従った取り扱いを受けられるようにする取り組みが進められており、国民の意識や社会の受け止め方にも、相応の変化が生じているものと推察される。

以上の社会的状況などを踏まえ、規定の目的、自由の内容・性質、その制約の態様・程度などを総合的に比べると、本件規定は、現時点では憲法13条に違反するとまではいえないものの、その疑いが生じていることは否定できない。

性同一性障害者の性別に関する苦痛は、性自認の多様性を包容すべき社会の側の問題でもある。性同一性障害者を取り巻く問題について、更に広く理解が深まるとともに、一人ひとりの人格と個性の尊重という観点から各所において適切な対応がされることを望む。

「性同一性障害者の性別に関する苦痛は、性自認の多様性を包容すべき社会の側の問題でもある。」という最終段には,身の引き締まる思いがします。
皆が一緒であることが良いこととされてきた社会から,周囲と異なる少数の人をも容認できる,より成熟した社会へ。
これは,私たちが今目指している,「外国人との共生」においても常に最優先で取り組むべき課題だからです。


以前の投稿でも取り上げた「千葉市パートナーシップ宣誓制度」が,1月29日に施行されます。

千葉市パートナーシップ宣誓制度
https://www.city.chiba.jp/shimin/seikatsubunka/danjo/partnership.html

千葉市パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱https://www.city.chiba.jp/shimin/seikatsubunka/danjo/documents/partnership_youkou_honbun.pdf

前回も書いたように,これは「いまだ現実に埋められていない隙間に、すべての個人の尊重のために制度の橋をかけようとする大いなる試み」です。私たちの千葉県で産声を上げたこの挑戦は今後他の自治体に広がり,いつか国民全体の意識を変える力のひとつともなるでしょう。

そんな矢先にあった最高裁決定。手術を要件とする内容は現時点でこそ「合憲」とされましたが,その補足意見の中で「特例法の施行から14年余を経て、(中略)近年は社会の様々な分野で、性同一性障害者が性自認に従った取り扱いを受けられるようにする取り組みが進められており、国民の意識や社会の受け止め方にも、相応の変化が生じているものと推察される」とも述べれられました。
社会の意識は常に変わります。違憲となる可能性があることに言及した補足意見は,今後もたゆまぬ検討を重ねてゆくという「たすき」を,後の司法に対してしっかりとつないだもののように思えました。


補足意見は,三浦守裁判長,鬼丸かおる裁判官の2名によるものです。

鬼丸裁判官は来月初旬に退任されます。
私が判例を読むようになったここ数年は,鬼丸裁判官が最高裁判事に任命されてからの期間とほぼ重なります。常に女性や少数者の立場を思いはかり,良識ある市民の感覚にとても近い意見を,暖かく,厳しく,述べられていたように感じます。
われわれ世代の女性は,10歳か20歳,もしくはもっと上の世代の多くの先輩方が,社会における女性の可能性を切り開いて下さったおかげで,現在どういった場所でも本人の努力次第で活躍できるようになったのだと,いつも思っていました。そんな中,今日これを書くにあたり調べたところ,なんと鬼丸裁判官が私にとって高校のちょうど20年先輩でいらっしゃることがわかり,とてもとても誇らしく,そして感謝の気持ちでいっぱいになりました。

大勢の後輩のうちの名も無き1人として,今後のますますのご活躍を,心から祈念させていただこうと思います。

 

 

 

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