【追記あり】入管難民法改正案 11月2日閣議決定へ

10月29日、自民党法務部会は入管難民法の改正案を了承しました。このあと、11月2日には閣議決定され、来週には衆議院本会議で審議入りする予定です。小欄でも、閣議の内容、閣議後の会見、随時フォローしていきたいと思います。

前述の部会や、先立って行われたヒアリング等で懸念事項として挙げられたことについて、漠然とではありますが、現時点で私の感じていることを少し書かせていただきます。

まず、「人手不足が解消されたら新たな受入れをやめる」というざっとしたスタンスですが、それで果たして外国人の方は「この試験に受かって日本で働こう」と準備する気持ちになるのでしょうか。始める前から梯子を外すかのような前提は、この取り組みすべてに対する信頼を失わせることになりかねません。それでなくても、働きに行く国としての魅力が相対的にどんどん下がっていることを念頭に置くべきだと思います。本気でやるなら、一定期間の検証を経て何年後に見直す、業種・地域ごとに目標数値を設け先行きを明確にするなど、もう少し工夫が必要でしょう。
「日本人の仕事を奪う」という反対意見も今一つ筋が通っておらず、まるで過去の自動車輸出をめぐる日米貿易摩擦を向こう側で見ているようです。当時私はアメリカの大学に在学していましたが、経済の授業で先生が「Opportunity Cost(機会費用)」の概念を用いてモヤモヤを取り除いてくれたことをよく覚えています。
そもそも日本人が嫌がって敬遠する職場や地域に外国人が来てくれるのであって、外国人が住んでくれなければ共同体の維持自体が不可能になりつつあるという、地方の切実な声も聞こえてくる状況。受入れ企業に課される義務、生活支援のための自治体の負担、社会保障費の負担など、背負わなければならないものはそれぞれにありますが、働き手を確保し、経済成長を維持するためには、まずは一歩を踏み出したいと感じます。

治安について懸念する声が挙がっているようですが、私の済んでいるエリアも、事務所所在地である東西線行徳駅付近も、外国の方は大変多いです。でも、こと治安・安全について、外国人に対して不安や不満を覚えたことは一度もありません。むしろ日本人の、交通ルールを守らない子供や主婦の自転車、ハンドルにしがみつく高齢ドライバー、酔っ払い、歩きたばこ、犬の糞尿の後始末をしない飼い主、バスや電車で騒ぐ小僧ども、歩行者の迷惑を顧みないランナー、たばこのポイ捨て・・・少し脱線しましたが、まったく、日ごろ腹の立つことを挙げるとキリがありません。
自民党の女性議員が、「技能実習生が昨年だけで約7,000人失踪」と発言したそうですが、技能実習の在留資格で入国した者で、本邦に適法に在留することのできる期間を経過して滞在しているとみられる者の数の累計が、平成30年1月1日現在で約7,000人というデータこそ法務省から発表されていますが(本邦における不法残留者数について)、「1年に7,000人失踪」など、常識で考えてあり得ないことは明らかです。平成29年の1年間に増加した、技能実習の在留資格による在留外国人数が45,645人。年7000人が失踪するとすると、シンプルに考えて新たに来日した人数のうちの15%が失踪するということになります(※)。根拠があるなら見せてもらいたい。この程度の議員が議論し、それをそのままメディアが報道しているのかと思うと恐ろい限りです。
「外国人の増加→治安悪化」という先入観は見直した方がいいと思います。平成の世も終わろうという時代なのですから。

政府与党の想定しているタイムスケジュールによれば、今臨時国会の会期末である12月10日までに法案を成立させ、その後来年3月末までには制度の詳細を完成させて、4月に施行とのこと。各省庁に分担される技能の試験および日本語の試験の設計だけでも大変なことと思いますし、受入れ先や自治体に求められる生活支援策、ことに多言語サポートの人員確保など大きな問題でしょう。
そもそも来年4月というところに本来の目的外の意図も働いているのだとは思いますが、限られた時間で適切に議論は尽くしていただきたいと思います。

最後に、昨日あるテレビ局のニュース番組で、現在技能実習生として就労している外国人が、「特定技能1号に移行しても家族を呼び寄せられないから、現在の実習が終わったら帰国する」という決断をしたことについて、ひどく同情的に報道していました。
技能実習制度の本来の趣旨は、技能を学び、自国に持ち帰ることです。その点を履き違えた放送内容はいかがなものかと思います。
もっと言えば、よく使われる「事実上の永住を認める」という表現も大きな誤解を招きます。「要件を満たせば永住許可申請が可能になる」と表現するべきで、既存の就労資格で在留している方が「永住者」という資格にどれほど憧れ、どれほど頑張って取得しているか、その現場の空気を知らない人が軽々しく使っているのだなと感じます。

このたびの我が国の外国人政策の壮大な転換については、さまざまな情報が飛び交い、様々な立場や信念の人が根拠もなく好き勝手なことを書いています。私もその一人ではありますが、少なくともつねに「生データ」に当たり、事実として正確なことを綴っていこうと思います。
お読みいただいている皆様も、歪曲された情報にはくれぐれもご注意の上、ご自身の考えをもって来るべき大きな変化に臨んでいただければと思います。

 

【参考:新在留資格についての過去の投稿】



 

-11月2日追記-

■本日午前の閣議で改正法案は了承されました。来週には国会で審議に入ります。本件につきましては引き続きフォローしてまいります。

 

※本文中に不適切な説明がありました。下記のように訂正いたします。

誤:「平成29年の1年間に増加した、技能実習の在留資格による在留外国人数が45,645人。年7000人が失踪するとすると、シンプルに考えて新たに来日した人数のうちの15%が失踪するということになります。」

正:「平成29年の1年間に「技能実習1号イ」「技能実習1号ロ」の在留資格で来日した外国人が21,553人。年7000人が失踪するとすると、シンプルに考えて新たに来日した人数のうちの33%が失踪するということになります。」

45,645人という数値は、技能実習2号も含めたものでした。2号は1号を修了した者にのみ認められるもので、「2号の資格で入国」ということはあり得ません。したがって新規入国者数は1号イと1号ロの合計であり、正しくは21,553人となります。お詫びして訂正させていただきます。(参考資料 法務省HP 平成30年6月末現在における在留外国人数について(速報値)公表資料、出入国管理統計統計表 国籍・地域別 新規入国外国人の在留資格 2017年

年に7,000人の失踪というのがいかにものすごい数か、来日するそばから3人に1人が失踪するということで、これが事実なのかどうか、真剣に検証が必要です。
この数があまりに取り沙汰されるので、あらためて厚労省や機構による発表で見落としているものがないか見直しましたが、本日の時点では何も見つかっておりません。

 

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